「会議で意見が食い違い、いつも多数派の意見に負けてしまう」
といったことは、どこの職場でも起こり得ることです。
ただ、多数派の意見が正しいならともかく、ときに「声の大きな人」つまり影響力のある人が間違った意見を通してしまうことがあります。
今回は「少数派の正しい意見」をどうすれば社内でとおしてもらえるのか、具体的な方法について詳しく解説していきます。
それでは一緒に学んでいきましょう。
ブルー・グリーンパラダイム実験から学ぶこと
「ブルーグリーンパラダイム実験」とは、スイス人の研究者「S.モスコビッチ(Moscovici, S.)」がおこなった実験のことを指します。
「ブルーグリーンパラダイム実験」では、少数派の意見が多数派の意見にどんな影響を与えるか、心理学をもとに実験がおこなわれました。
ブルー・グリーンパラダイム実験の内容
この実験の概要は以下のとおりです。
・明るさや色合いの異なる「6枚の青いカード」をグループに見せ何色かを答えさせる
・グループのなかに「少数派のサクラ」を仕込んでおく
・少数派のサクラは、青いカードを「緑」と言うようにする
実験では6枚のカードを6回、つまり合計36枚のカードを見せられ、少数派のサクラは以下の3パターンで答えていきました。
・パターン1…回答に一貫性がなく、時々「緑」と答えた
・パターン2…示されるカードすべてが「緑」と、一貫性ある回答をした
・パターン3…緑とは答えなかった
上記の実験の結果、「少数派が一貫して緑」と答えると多数派の答えが少数派に引き寄せられ「青を緑」と答える人が増えてくることがわかりました。
つまり少数派と多数派の意見が食い違っていても、
「相手への伝え方」を工夫することで、多数派の意見も変えられる
ということがわかったのです。
参考文献:異文化間イノベーション実験 日本人少数者影響源がフランス人被験者の知覚転換過程にもたらす効果と社会的カテゴリー化の影響
少数派の意見をとおすには「信念」と「一貫性」が必要
「ブルーグリーンパラダイム実験」の結果を見てお気づきかとは思いますが、社内で少数派の意見をとおすためには「ブレない一貫性」が非常に重要です。
社内で違う意見をもった人がいたとして、その人が長いあいだ意見を変えずにいると「あれ?これだけ言うのにはなにか理由があるのかな?」と、相手の意見に耳を傾けようとしたことは誰にでもあるのではないでしょうか。
一方、自分が少数派だった場合、自分の意見に一貫性がなくコロコロと発言内容や温度感を変えてしまうと、多数派の意見はずっと変わらないということになります。
社内で多数派の意見を覆す6つの方法
いくら「信念をもって一貫性のある意見をもつ」といっても、実際のところは権力のある人の意見が重要視されたり、声の大きな人になびいてしまうのが現実です。
ここからは、実際のビジネスの現場で意見が食い違った場合に、自分の意見をとおしてもらう具体的な方法を6つご紹介していきます。
1.論破できる根拠を持っておくこと
多数派の意見と自分の意見が食い違った場合、かならず必要となるのは「数値的な根拠」です。
意見が相違したとき、単純に「こっちのほうがいいと思うんですよね」と言っても、誰も説得はできません。
どうしても自分の意見を貫きたいなら以下の根拠を整理し、いつでも答えられるよう準備しておきましょう。
・自分の考えに至った根拠(数値根拠を踏まえた現状の課題)
・自分の考えを実行した場合のメリット(効果を数値で示す)
・自分の考えを実行した場合のリスク(失敗した時のリスクと対策を示しておく)
2.多数派の意見との類似点を見つけておく
少数派の意見を推進したいなら、多数派意見との「共通点」を見出しておくことがポイントです。
たとえば、ある新商品を開発すると仮定しましょう。
多数派はA商品を推進し、少数派はB商品を進めたいと思っているとします。
当然AとBの商品は異なっているわけですが、社内会議で「AとBの違い」を真っ向から指摘してしまうと、多数派は「全否定された」という気持ちになってしまいます。
その結果、B商品に良い点があったとしても認めてもらえずに、かたくなに多数派の意見を押し通されてしまうのは目に見えています。
多数派の人たちも、自分たちの意見を認めてくれたうえでの新しい意見には、耳を傾けてくれるに違いありません。
3.攻撃的な態度はとらない
意見が食い違う相手に対し「こっちの意見が正しいのだ!」と攻撃的な態度で挑むと、相手も攻撃的になり妥協点を見つけ出すことはできません。
会議などで自分の意見を発表するときは、常に冷静に多数派の意見に敬意をはらって自分の意見を述べるようにしましょう。
4.100%勝とうとしない
社内会議などで意見が食い違った場合、どうしても自分の意見をとおしたいがあまり「相手を完全論破してしまう」傾向があります。
逆の立場になるとおわかりいただけると思いますが、相手から完全論破された相手は「負けた」という気持ちばかりが前面に出てしまいます。
仮に、少数派の意見が採用されたとしても、今後協力してくれることはないでしょう。
さきほどの繰り返しになるかもしれませんが、意見が食い違うときは相手の意見をある程度認め「100%勝たないようにする」ことも大切です。
5.第三者に代弁してもらう
社内で相反する相手同士が議論すると、場合によっては延々と折り合いがつかずに、「物別れ」で終わってしまうケースもあります。
そのようなことを避けるためにも、自分の意見を「第三者に代弁してもらう」という方法もおすすめです。
たとえば、さきほどの新商品開発の場面でいくと、自分の商品アイデアを自分自身で説明するのではなく、「設計者の立場から」または「試作を使ったユーザーの意見として」といった感じで、第三者に説明してもらうと、すんなりと受け入れてくれることもあります。
この事象を「ウィンザー効果」という心理学で説明することができます。
6.社内で「声の大きい人」への根回しをしておく
最後のポイントは「根回し」です。
冒頭でも触れたとおり、社内ではどうしても「発言力がある人」の意見になびいてしまうものです。
もし、社内で発言力がある人との意見相違が想定される場合は、面倒でも議論の日を迎える前に「事前説明」をしておきましょう。
ただし、事前の根回しをするといってもストレートに「前もって自分の意見を説明したい」と伝えても拒否されるだけです。
そこは「明日の会議前に、事前にご意見をお聞きしておきたいのですが」と、相手の意見を尊重するように持っていくことがポイントです。
事前の根回しの時間をとってくれたら、自分の意見との共通点を見出して相手へ敬意を払いつつ、自分の意見の良いところをインプットしておきましょう。
あわせて読みたい:「話が上手い人」と言われるための7つの条件
最後は自分の意見に責任を持とう!
上記の方法を使って一貫した意見を持てば、いつか自分の意見は採用されるはずです。
ただ、多数派の意見を押し切って自分の意見をとおしたのですから、
「自分の意見には最後まで責任を持つ」
ことは忘れないようにしましょう。
また、商品開発や社内改革などで自分の考えが成功したときには、意見を交わした方々への感謝も忘れないようにしたいものですね。