私は職場の問題解決コンサルティングとして、多くの上司と部下の両方の悩みを聞いてきました。今回はリモートワークにおける「残念な上司」という内容でお届けします。
新型コロナウイルスの影響で、テレワークを導入する企業が激増する前から上司は、
「テレワークで部下がどうしているのか、仕事が進んでいるのか分からない」
と悩みをよく聞きます。
さらに部下は、
「リモートワークにおいて、日々の業務を上司にどうアプローチしたらいいのか?」
「対面しないで報告・相談するにはどうしたらいいのか?」
と悩む話を多く耳にします。
テレワークで部下とのコミュニケーションがうまくいかない上司の特徴
結論から言うと、「業務連絡のみ」と「レスポンスが遅い」という2つの条件が重なると、テレワーク環境では「コミュニケーションが苦手な上司」になってしまいます。
これには理由があります。
1.まず、なぜ「業務連絡のみ」ではダメなのか?
ひとつには、テレワークをしていると、部下が得られる情報量が減り、情報に対する渇望感が増すからです。
この状況はいつまで続くのか?
会社では何が起こっているの?
上司は正直に「私にもわかりません」と言うかもしれませんが、「会社は今のところ新しい指示を出していません」というのも情報です。
何も情報を発信しなければ、部下はそのことすら知りません。
仕事のことしか伝えないのでは、部下の情報ニーズに応えることはできません。
業務連絡のみではダメな理由はもう一つあります。
テレワークをしている部下は、人との接触を求める傾向があるので、それをケアする必要があるのです。
上司がたまにメールを送ってきたと思ったら、「○○はどうなっている?」「いつまでにできる?」とかのみ……。
これでは、部下はドライで冷たいと感じてしまいます。
対面でのコミュニケーションが減っている状況では、余計にそう感じてしまうのです。
2.上司のレスポンスが遅い、という問題
次に、レスポンスの問題を考えてみましょう。
応答が遅い上司は、日常的にも部下の悩みの種ですが、テレワーク環境ではさらに顕著になります。
例えば、上司の承認を得なければ遂行できない仕事があったとします。
職場では「すみません、お忙しいとは思いますがいつになったらあの件の承認ができますか?」と言うのは簡単です。
たとえ待たされたとしても、仕事中に上司が何をしているのかが見えれば、「ああ、忙しいんだな」と思うことができます。
しかし、テレワークの環境では上司の状況が見えず、「やっぱり上司は忙しいのかな?」と待つしかありません。
パソコンの前で待たされる部下にとって、上司の反応が遅いことは大きなストレスになります。
テレワークで上司に望まれることとは?
「業務連絡のみ」ではダメだから
上司にできることは、部下から受ける「報告」というコミュニケーションに何かを加えることと、迅速に対応することの2つです。
私があらゆる職場のコンサルティングをした経験から言いますと、ビジネスコミュニケーションに加えたいのは、“雑談”です。
現在、自宅でテレワークをしている30代の女性から「上司は朝、いつもメンバーと会話している」という話を聞きました。
上司は、朝メンバーにメールを送るときにまず、『最近、私は朝、仕事を始める前に鉢植えに水をやっています。みんなはどうしているの?私はそれだけで癒されます。』などという前置きを置くそうです。
同じくテレワークをしている40代の男性は、「上司から仕事のメールで『運動不足じゃないか?』と言われるけど、そういった小さな配慮が嬉しい」と言っていました。
このように、ビジネスコミュニケーションにおいて一言添えてみてはいかがでしょうか。
「30分以内の返信を期待」する部下
部下からのメッセージについては、30分以内を意識するといいでしょう。
部下の立場の人に意見を聞いてみると、「30分以内に返事が欲しい」という人が多かったのは印象的です。
それ以上かかりそうな場合は、「今、お客様の対応をしていますので、このくらいの時間にはお返事できるよ」などのメッセージを送るといいでしょう。
30分以内に返事をするというのは、上司にとってはかなりのプレッシャーに見えるかもしれません。
それでも、ノートパソコンの前でじっと待っている部下の顔を思い浮かべながら、迅速な回答をしてあげてください。
テレワーク環境で部下としてどのようなコミュニケーションをとればよい?
一方で、部下として上司にすべきこともあります。
ここで考えてみましょう。
テレワーク中の上司は、部下がどうしているか、仕事が進んでいるか、自分の知らないところで問題が発生していないか?などを気にすることが多いのです。
部下のことを心配するだけの上司もいれば、報告という形で詳細を求める上司もいます。
まずは、そのような上司の状況を頭に入れて、対応を考えてみましょう。
部下の中には、日頃から口頭で報告しているのに、書面で報告書を出すことに煩わしさや戸惑いを感じる人もいるでしょう。
しかし、この機会に上司への対応のスキルやレベルを上げてみてはいかがでしょうか。
最も重要なポイントは「報告」と「相談」
まず、基本に立ち返ってみましょう。
報告とは本来、仕事を発注した人に情報を提供するサービスのことです。
この原点に立ち返って考えれば、発注者が欲しい情報を欲しい順に書き出していくのがよいでしょう。
具体的には、全体像や結論から書き始めるといいでしょう。
例えば、日報のようなメールの冒頭では、全体像は次のように書きます。
“今日の仕事は接客が8割、事務が2割でした。”
苦情の内容については、詳細に記述する必要があります。
相談とは「問題を解決するために、他人に意見や判断を求めるための情報収集」であり、自分の考えを述べることがポイントです。
例えば、「今こんなことで困っていて、こういう方法で解決したいのですが?」というように書きます。
相談の場合はメールと電話を併用することで、より短時間で問題を解決できる場合があります。
例えば、問題の解決策としてAとBの2つの可能性がある場合、それぞれの解決策の概要をメールで送り、電話でやりとりすることで、可能性の低い方の解決策を詳細に説明する必要がなくなります。
次に、報告書を作成するタイミングについて考えてみましょう。
日報が必須ではなく、企画書や記事、デザインなどの成果物を提出することもほとんどない場合、どのくらいの頻度で上司に連絡すればいいのか悩むところです。
上司に聞いてみると、「週に2回くらいは簡単な近況報告をしてくれると心強いし、コミュニケーションのきっかけになる」という声が多く聞かれました。
例えば、月曜日にはその週の大まかなスケジュール、水曜日には短い進捗状況の報告、金曜日にはその週のまとめと来週の予告があると良いでしょう。
報告を面倒な仕事だと思わず、上司へのプレゼンテーションだと思ってください。
日常の仕事に戻ったときに必ずプラスになります。
さいごにテレワーク環境での職場コミュニケーションの未来
最近、テレビ会議ツールを使ったオンライン会議をよく耳にするようになりました。
1対1のコミュニケーションにはEメールやメッセンジャー、電話を使い、3人以上での会議にはテレビ会議システムを使うというものです。
ここでは、テレビ会議におけるコミュニケーションのポイントを「話す」「聞く」の両面から見てみましょう。
テレビ会議と対面式の会議の最大の違いは、相手と顔を合わせることができないことです。
対面式の会議では、相手に顔を向けることで「あなたに話しています」というメッセージを伝えることができます。
しかし、テレビ会議では、カメラに向かって話をしなければならないため、全員に漠然とした話をすることになり、聞き手は集中できません。
それを補うために、会話の中に相手の名前を頻繁に入れることをしましょう。
例えば、「私も●●●さんと同じ印象を持っています」というように。
聞き方としては、オーバーリアクションがおすすめです。
パソコンの画面では、一人一人の顔が小さく表示されるため、話している人が聞き手の反応を感じ取ることができません。
だからこそ、いつもよりも大きくうなずくなど、大きなリアクションをするといいでしょう。
今後、オンラインでの会議が増えてくると思います。
そんなときには、ぜひ上記のような「話す」「聞く」を試してみてください。
孤立しがちなテレワーク環境でのコミュニケーションがより効果的になります。
テレワーク環境になって、同僚と会える普段の仕事のありがたみを改めて感じている方も多いのではないでしょうか。
早く普通の日に戻りたいと思いつつも、しばらくはこの状況が続きそうです。
それならば、テレワークという働き方に合わせて、上司・部下・同僚の間に新しいコミュニケーションのパイプを作ってみてはいかがでしょうか?