近年、働き方改革の中で注目を集めているウェルビーイングという概念。
ウェルビーイングは端的にいえば、以下のとおりです。
- 肉体的に健康であること
- 精神的に健康であること
- 職場のコミュニティで尊重されていること
- 個人のコミュニティで尊重されていること
- 社会的にひとりの人間として認められていること
以上の要素が集まっているのがウェルビーイングです。
詳しいウェルビーイングについてはこちらの記事に譲るとして、今回は部下のウェルビーイングは上司である「あなたが左右する」というお話をします。
部下を満たされた状態にすることは上司の義務
部下を満たしてあげるということは、どういう意味でしょうか。
結論からいえば上司であるあなたは部下の、
- 健康を気遣い
- ビジネスの成功を願い
- 必要に応じて周囲から称賛を浴びせる
ということが必要です。
一方で、上記のお話をすると、
「なんだ、そんなことはとっくにやっている」
「それは甘やかしではないか?」
「上司の威厳がなくなる」
といった声が聞かれます。
果たしてこれらは間違いです。
1つずつ見ていきましょう。
部下の健康を気遣うということ
ウェルビーイングは、たんなる顔色確認や声掛けでは満たされません。
上司であるあなたは、部下に対して次のことができていますか?
- 定期的な面談(会社としてではない)
- 率先したノー残業
以上の要素は、結果的に部下の健康を気遣うことになります。
それでは見ていきましょう。
定期的な面談(会社としてではない)
上司と部下の関係としての面談はやっていますか?
ウェルビーイングを改善しようとしている企業は部下との面談を重視しており、面談中は電話対応や業務指示の一切から離れる、ということを徹底しているところもあります。
このやり方は非常に理にかなった方法で、部下から見れば「自分のためにしっかりと時間を割いてくれている」と感じてもらえます。
もし、上司であるあなたが部下と面談中に電話を取ったりしたら、部下はどう感じるでしょうか?
「電話がひっきりなしに掛かってくる、仕事のデキる上司だ」
そう思っていますか?
現実は「お忙しいんですね」と言っておきながら、心のなかでは
「自分の面談は形だけでやっているんだ……結局、自分のことを思ってくれているのはただのポーズなんだ」
と思っているのです。
これではウェルビーイングは満たされません。
上司のあなたは、こういった些細な立ち振舞いに至るまで気をつけておくべきです。
面談を通して部下の健康を気遣い、必要に応じて業務負荷を調整するなどのアジャスターを行うのも上司の仕事です。
率先したノー残業
多くの上司が、自分は帰らずに部下には「帰りなさい」と言っています。
残念ですが、部下のほとんどは後味の悪さを感じています。
「しょせん、ノー残業デーなんて形だけだ」
部下がこのように思ってしまったら、ウェルビーイングは満たされません。
ウェルビーイングが満たされている部下の上司というのは、ノー残業デーに限らずメリハリがあって、率先して「帰って」います。
もし上司のあなたが「残業こそ、頑張っている証だ」と思っているなら、今すぐにその考えを捨ててください。
残業で頑張っていると評価されるのは日本だけです。
デジタルネイティブ世代の部下は世界的視野を持っていて、合理的思考を持っています。
いつまでも古い価値観で部下を指導していると、いつかは目に見える形で反発を受けます。
部下のウェルビーイングを満たせる上司は、自分が見本となっているのをよく分かっているので、率先して帰っています。
ボスであるあなたが、仕事をテキパキこなして定刻通りに帰るということを部下に示すことで、「時間あたりの生産性」について気づきを与え、時間は有限であることを教えます。
部下は時間にメリハリのある日常を送れることにより、しっかりとした休息時間と睡眠時間を取ることができて、心身ともに健康的な状態で仕事に望むことができます。
部下のビジネスの成功を願う
上司であるあなたは、部下に仕事をパスした後は「成功を願う」だけではいけないというのは分かるかと思います。
具体的には、細やかなゴールを設けてスケジューリングの意識をもたせます。
上司であるあなたは、部下が無事に小さなゴールを通過したかどうかコミュニケーションを取って確認をします。
ただ、これだけでは「仕事をやらされている感」を部下に与えてしまいます。
大切なのは「権限を移譲」ことです。
ゴール通過ごとに上司へのレポートを求めますが、それまでのプロセスについては上司であるあなたは、出来るだけ干渉しないように努めて下さい。
必要に応じて、部下には分からないように周囲に根回しをして、部下がなにかをするたびに「上司への確認が必要」という状況をなくしましょう。
できうる限り、部下に権限を与えて「自力で解決する」環境を作ります。
部下は「自分を信頼してくれている」と感じてもらえます。
上司は「部下の君が必要だ」ということを態度や言葉で示しておくことがポイントです。
上司のあなたは、たんなるレポート受付係ではいけません。
必要に応じて周囲から称賛を浴びせる
褒めちぎることをおすすめしているのではありません。
人間はアメとムチは必要不可欠ですが、根本的に「褒められる」ことで能力は伸びていきます。
脳科学者で有名な澤口俊之氏も次のように言及しています。
褒めるときに重要なのは、「頑張った」というプロセスを褒めることです。多くの親や上司が間違いがちなポイントですが、「頭がいいね」「君はデキるね」と能力だけを褒めても、効果はあまりないでしょう。努力や熱意を褒めることで、やる気の回路が育つのです。
引用元:「THE21」https://shuchi.php.co.jp/the21/detail/2260
脳科学者 澤口俊之氏
実際に、マネジメントの現場においてもチームワークを統一するには「褒める」ことが効果的だといわれています。
大切なのは部下に「職場でも必要とされている人間」であるということを知ってもらうことです。
まとめ
部下のウェルビーイングは上司のあなたが左右する、という解説をしてきました。
上司のあなたはどうお考えでしょうか。
部下のウェルビーイングを満たすには、上司であるあなたの存在が不可欠で、しかもその影響は多大です。
チームとしてのパフォーマンスを出したければ、部下のウェルビーイングにまで意識を向ける必要があります。