発達心理学とは、人が一生の間に心と体を成長させ、発達させ、変化させていく過程を研究する学問です。
発達心理学を知り活用することは、
- 自分や他人への理解を深めたり
- 円滑な人間関係を築いたり
- ビジネスにおける問題を解決したり
このような課題解決をするのにとても有効です。
今回は、発達心理学について知っておくとどんなメリットがあるのか、またビジネスシーンでの活用法について詳しくご紹介します。
発達心理学とは?
もともと発達心理学は、乳児期から幼児期、児童期、青年期を経て大人になるまでの成長過程を対象としていました。
しかし、近年では青年期、壮年期、老年期になっても心理的な発達が続くという観点から研究されています。
発達心理学では、このような変化を4つのカテゴリーに分けています。
- 情緒的:喜び、怒り、悲しみ、嘆きなどの感情
- 社会性:人との関わり方や人間関係の形成
- 認知的:周囲の環境や世界との関わり方、自分の考えや行動に対する認識など
- 身体的能力:運動能力、視力、聴力などの身体的能力。
これらの能力が成長や加齢の過程で変化していくと、なぜそのような行動をとるのか、なぜそのように感じるのかなど、他人や物事に対する認識や理解も変化していくことを追求する学問なのです。
一般人が発達心理学を学んで得られるものとは?
発達心理学で人間の成長や発達を学ぶことは、自分自身や他者への理解を深めることにつながります。
ここでは、ビジネスに活用することで得られるメリットをご紹介します。
問題に直面したときの対処法
人はなぜそのような行動をとるのか、なぜ出来事に対してそのように考えるのかを知ることで、問題への取り組み方や乗り越え方を学ぶことができます。
もともとの性格だけでなく、人間の心の発達段階についても理解を深め、より広い視野で物事を見ることができるからです。
もう一つの大きなメリットは、自分だけでなく他人への理解が深まることです。
自分の意識の発達段階を知り、自分がどのレベルにあるのかを知ることができれば、問題に対してなぜそのように感じるのか、今後どのように成長していくべきなのかを客観的に理解することができます。
人間関係の改善
自分を含めた人の心理的特徴をより客観的に見ることができるようになることで、人そのものを理解し、許容することができるようになります。
人を「こうだ!」と決めつけるのではなく、心理的な発達段階にあると捉えることができれば、人間関係のトラブルにも冷静に対処できるようになります。
このような考え方は、人間関係を良好にし対人関係のストレスを減らすことにつながります。
人をメンタル面から支えられる
落ち込んでいる人の状態や要因を客観的に把握しメンタル面からサポートをする。
的確なアドバイスを行い、理解や安らぎの感情を伝えることは、悩んでいる人にとって大きな支えとなります。
悩みの表面だけでなく、心理的な問題も含めて原因を探ることでより深く理解することができ、さまざまな形での支援が可能になります。
発達心理学をビジネスシーンに活用する
発達心理学をビジネスに活用するためには、「大人発達理論」を理解する必要があります。
大人発達理論では、人の意識は大人になっても成長・発達し続けると考え、意識レベルを4つの段階に分類しています。
- 利己的・道具的な段階
- 他者への依存・慣習的(型にはまった)段階
- 自己演出・自己著述の段階
- 自己変容・相互発展段階
では、それぞれのステージにはどのような特徴があるのか、またそれぞれのレベルの人にどのように対応すればよいのかを見ていきましょう。
第1段階:利己的・道具的な段階
第1レベルの人は、自己中心的で利己的な性格をしています。
自分の欲求や感情を最重要視し、自分の目的を達成するために他人を道具として利用することがあります。
相手の立場に立って物事を考えることができないため、相手がどのように感じるか、自分の行動が周囲にどのように受け取られるかがわかりません。
この段階の人をサポートするには、「その時、相手はどんな気持ちだったと思いますか」などと質問してみましょう。
こういった設問を繰り返すことで、第三者の視点を養うことが可能です。
第2段階:他者への依存・慣習的(型にはまった)段階
第2ステージでは、相手の立場に立って考え、相手の気持ちを理解することができるようになります
しかし、自分の意思や価値観が完成していないため、自分で考えることなく、他人の考えや習慣、ルールに依存して行動してしまう。
言われなければ動かないし、書かれていないことはしない。
このレベルの人には、「あなたはどう思いますか?”どうしてそう思うの?」「どうしてそう感じるの?」と問いかけて、考えてもらい、言葉にしてもらうことが大切です。
これを繰り返していくうちに、「私はこう思う」「私はこうしたい」など、次第に自分の意見を言うことに慣れていきます。
第3段階:自己演出・自己著述の段階
第3段階では、相手の立場に立って考えることに加えて、自分の意見や価値観が確立されてきます。
相手の立場に立って考えることに加えて自分の意見や価値観が確立されてきますが、このとき、自分の判断基準に縛られて、新しい価値観や他人の意見を受け入れず、自分が正しいと思い込んでしまう傾向があります。
この状況を改善するには、これまでの自分の行動や考え方を見直すしかありません。
今の価値観に至った前提が本当に正しいのかを考え直し、自分の過ちに気づくことができれば、新しい価値観ややり方にも柔軟に対応できるようになります。
この作業を他人に勧めるときは、「そう思う前提は何ですか」と聞いてみることをお勧めします。
第4段階:自己変容・相互発展段階
第4ステージでは、既存の価値観にとらわれることなく、常に新しい自分に更新していきます。
時間の流れや環境の変化に応じて、「これが自分だ」と決めつけることなく、柔軟に自分を変えていくことができることを理解するようになります。
この段階にある人間は、時の流れや環境の変化に応じて自分が柔軟に変化できることを理解できるようになります。
また、他者との関係においても相手を自分の成長に欠かせない大切な存在として捉えることができるようになります。
第4ステージの人は頼りがいがあって好感が持てますが、あなたがこれに当てはまらなくても落胆する必要はあません。
4つのステージの違いは、生まれつきの性格を意味するものではなく単なる発達段階の違いであり意識レベルは誰でも訓練次第で伸ばすことができます。
まとめ
発達心理学とは生涯にわたる成長・発達を研究する学問であり、日常生活だけでなくビジネスにも役立ちます。
意識レベルが発達した人を企業内に増やすことで、コミュニケーションが円滑になったり仕事の効率や生産性が向上したりと、さまざまな効果が期待できます。
4つの意識レベルは自分がどのレベルにいるのか、どうすれば開発できるのかを知るための指標です。
仕事や人間関係で行き詰ったときには、ぜひ発達心理学を活用して円滑なコミュニケーションと精神的な安定を取り戻してください。