今回は、【部長・嶋よしかず】が人材育成・職場問題解決のコンサルティングをした経験から得られた内容をお届けします。
部下に大いに働いてもらうコツの一つは、部下が働こうとするのを、邪魔しないようにするということだ
松下幸之助
この言葉に代表されるように、初めて部下を持ったとき多くの上司は「主体性を発揮して、チャレンジして、試行錯誤して、成長して、結果を出してほしい」と思っています。
しかし実際には、
「任せっぱなしはどうだろうか。なんだか目線感が低い気がする。叱らないといけないのかな……。」
「”まずは任せてみよう “と思っても、彼らの仕事ぶりを見ていると、あれもこれもと言いたくなってしまう。結局、試行錯誤の末、すべての作業を自分で行うことになり、ほとんど自分のアイデアのようになってしまった……。」
このような壁にぶつかることもあると思います。
そんなとき、多くのベテラン上司が部下との接し方を劇的に改善するために活用している5つのスキル点を紹介したいと思います。
1.部下との関係は、話をしている時間に比例する
ストレングスファインダー(クリフトンストレングス)で知られる米国のGallap社は、組織に関するさまざまな研究成果を発表しています。
わずか177問の質問で、あなたの優れた才能が明らかになります。
クリフトンストレングス
その中でも特にインパクトのある調査結果は、「部下のモチベーションは、上司とのコミュニケーションの総量と高い相関関係がある」というものです。
そもそも重要なのは、そのやりとりがポジティブかネガティブかではなく、その絶対量なのです。
つまり、上司になりたての頃は、「要点をまとめよう」「できるだけ多くのことをやろう」とする前に、まずは部下との接触や会話の量を増やすことが大切だということです。
2.人間関係を良くする→思考力を高める→自発的に行動する→結果を出すという意識
次に、MITのダニエル・キム氏らが提唱する「成功循環」モデルについて詳しく知りたいと思います。
簡潔に言うと、
- 部下が上司によって”守られている”と感じられるよう、関係を良好にする
- そうすれば、部下は自由に発言し考えることができるようになります
- そして、部下が自分で考えたプランを行動に移すことができるようになり、
- その結果、彼らは高いコミットメントで行動し、結果を出すことができる
このようになります。
そして、結果が出れば、雰囲気が良くなることで上司との関係も自然と良くなり、上記の流れが続いていくのです。
まさに成功の循環ですね。
もっとも参考になるのは、何よりもまず関係性を改善することから始めたほうが楽だということです。
ですから、最初のアプローチで述べたように、まずは会話や接触の量を増やすことが大切です。
3.学習を進める際には、「怒り」や「恐怖」を感じさせないこと
近年、脳科学の分野は組織論や人事のテーマに急速に浸透し始めています。
その主な理由は、MRAの発達により脳内の動きと人間の行動を結びつけることが非常に容易になったからです。
この中でまず参考になるのは、人に何か新しいことを試してもらったり、試行錯誤して学んでもらったりするときに、怒りや恐れを感じさせてはいけないということです。
これらの感情が生じると、脳内での学習が促進されないことが知られています。
したがって、「叱って興奮させる」というアプローチは、自然な行動を促すときには有効ですが、新しいことを学ばせようとするときには使ってはいけません。
部下がなかなか成長しないな、という上司の方は、もしかしたら部下を奮い立たせるために、いつも叱っているのかもしれませんね。
心当たりはありませんか?
4.チームの目標や方針は妥当だと思うレベルの4倍を繰り返す
アメリカの著名な心理学者であるミハエル・チクセントミハイは、有名な理論「フロー理論」の中で、人が最も成長し、成果を上げるためには、時間の経過を忘れるほどの没頭状態(フロー)をどれだけ作り出せるかにかかっていると指摘しています。
そのためには、「何に集中すべきか」「何に集中すべきでないか」を明確にすることが重要な条件のひとつです。
上司としてこれを実践するには、自分が何を目指しているのか、どこまで達成すべきなのかを部下に明確にすることです。
そのためには、日頃から部下に目標を繰り返し伝え、上司が「ここまで言ったら伝わるだろう」と思うレベルの4倍のレベルで会話の中に盛り込むのがベストです。
押しつけがましいと思われないように……と遠慮することはありません。
高業績のマネージャーに共通するのは、目標を日頃からしつこく伝えていることです。
ただ、気をつけなければならないのは、ポイント3で述べたように、「怒り」や「恐れ」につながるような強圧的な態度をとらないことです。
5.上司が不完全であることを積極的に認め、定期的に部下に改善点を聞く
いろいろなことを仕掛け続け、積極的に部下を巻き込もうとする上司ほど、これをやるべきなのです。
部下に改善点を教えてもらうと、自分が弱くなったり、過小評価されたりするのではないか?と考えがちな人もいますが、そんなことは全くありません。
むしろ、精神的に強くないとこの質問はできないのです。
もちろん、このコミュニケーションには、上司としての自分の行動を正す効果もありますが、それ以上に部下には「上司が自分の不完全さを認めてくれているのだから、自分も不完全さを認めて修正しなければ」と思わせる効果があります。
アメリカの社会哲学者であるエリック・ホッファーが残した名言があります。
変化の時代には、学ぶ者が地上を制し、学ぶことをやめた者は、自分の力を発揮できる世界がもはや存在しないことに気づく
エリック・ホッファー
この言葉を胸に、日々の部下とのやりとりに磨きをかけてみてはいかがでしょうか。