こんな愚痴は、どこの職場でも聞こえてくることです。
部下の話に耳を傾ける「傾聴」はマネジメントでとても重要なことです。
しかし、この記事を読まれている人のなかにも、つい「ながら傾聴」をしている人がいるかもしれません。
部下の成長を願う上司にとって、「部下の話を聞く傾聴スキルの向上」はとても重要なポイントです。
今回は「人の話を聞かないダメ上司」と言われないための「傾聴スキル」について、詳しく見ていきましょう。
傾聴とは?
傾聴スキルについて詳しくお伝えする前に、まずは話を「聴く」という基本的な部分から考えてみます。
部下からの話を聞く場合、一般的には話を「聞く」という表現を使いますが、傾聴スキルでぜひ使いたいのは「聴く」というスタイルです。
「あれ?同じ話を聞くことを指しているのに、なんだかおかしい」と思われるかもしれませんが、実は部下の話を聞くためのポイントは、すべてこの「聴く」という漢字にあります。
「聴く」という漢字を分解すると、14個の心をつかって耳で聞くという意味が読み取れます。
つまり、マネジメントで必要な「傾聴スキル」とは、部下の話を音として聞くのではなく、「心をつかって聞く」という意味があるのです。
では、パソコンを操作しながら部下の話を聞いているあなたは、本当に「心がともなっている」と言えるでしょうか?
部下の話を聞くときの3つのテクニック
少し前置きが長くなってしまいましたが、「人の話を聞かないダメ上司」と言われないための「部下の話を聞くテクニック」をお伝えしていきます。
ただ、この記事の最後のほうでも触れますが、これらの上辺だけのテクニックを駆使しても、部下は上司の言動を見抜きます。
本当の意味で部下の話を聞くためには、テクニックよりも本質の部分が重要ということは忘れずに最後までお読みいただければと思います。
視線を合わせ部下の話には必ずうなづく
人はそもそも「承認欲求」を持った生き物です。とくに部下は「上司から認められること」には非常に喜びを覚え、モチベーションアップにもつながります。
部下から渡された資料に集中するがあまり「うなづくこと」を忘れていませんか?
目線は部下と資料とを交互にくばり、しっかり部下の目を見てうなづいて「認めること」がとても重要です。
オウム返し
部下の話を聞くときには、話の内容をしっかり聞いて時々、「オウム返し」をしてみてください。
たとえば以下のようなやり取りをしてしまったら、せっかく話をしようをした部下はどんな気持ちになるでしょうか?
部下「あの、ちょっとお時間いいですか?色々ありまして疲れてきました」
上司「は?どうしたんだよ!疲れてんのはみんな一緒なんだから頑張れよ!」
部下「あっ…、はぁ…すみません」
部下を元気づけるつもりで言った言葉でも、部下の気持ちを受け入れずに言ってしまうと、話はそれで終わってしまいます。
一方、「オウム返し」をしてみるとこんな感じになります。
部下「あの、ちょっとお時間いいですか?色々ありまして疲れてきました」
上司「そっかぁ。疲れてきたんだね」
部下「そうなんです。実は〇〇プロジェクトに納期遅れがありまして」
部下からすると、どっちが話しやすいでしょうか?
「聴く」とは心がともなっている必要があります。部下の話を聞く…、いや「聴く」ときには、まずは部下の気持ちに寄り添ってあげることが大切です。
部下の話を聞いている最中に返答を考えない
ここまでの話については「そんなことは言われなくてもわかっている」という人も多いでしょう。
ただ、部下の話を聞いている最中にやってはいけないことがあります。それが「聞いている最中に自分の答えを考える」ことです。
視線を合わせて部下の話を聞いていても、「自分が伝えたい内容」に考えをめぐらしてしまうと、その表情や言動がすべて部下に伝わってしまい「この人は自分の話を聞いていないな」とわかってしまうものです。
コーチングの大前提は「答えは相手のなかにある」です。
つまり「ちょっとご相談が…」とやってくる部下も、自分の中でにはある程度の解決策は持っているものです。
そんな答えを持っている部下に上司の考えを押し付けても、部下は話を聞いてくれる訳がありません。
答えを持っている部下が相談に来るのは、「解決策は知っているが具体的な解決方法がわからない」というケースがほとんどです。
部下からの話を聞いている最中には自分の答えを整理するのはやめましょう。
まずは、部下が相談してくる理由や背景をしっかり聞くことが大切です。
同じ「傾聴」でも、パッシブリスニング(受動的傾聴)とアクティブリスニング(能動的傾聴)というふたつの傾聴がありますが、上司は常に「アクティブリスニング」でなくてはなりません。
ちなみにこの記事を読まれている人のなかにも、パートナーと一緒に住んでいる人がいると思いますが、よくパートナーから「あなた人の話聞いてる?」と言われることがあると思います。
一般的に家庭内の「傾聴」は、上記のパッシブリスニング(受動的傾聴)です。
ひととおり話を聞いてから「じゃいまの私の話、なんだったか言ってみて?」と言われて焦った人も多いのではないでしょうか?
ぜひ部下の話を聞く場合には、部下の心を読み取るくらいの「能動的傾聴」を心がけてほしいものです。
ダメな上司が部下の話を聞かない理由
ここで、なぜ「ダメ上司は部下の話を聞かないのか?」という点についても考えてみます。
結論からいいますが、上司が部下の話を聞かないのは「部下に興味や好奇心がないから」です。
人は「自分が好きな人、興味を持っている人」の話はよく聞きますが、それ以外の人の話は聞かないものです。
ただ、上司も人間ですから自分の部下全員を好きになれるかというと、そうではないでしょう。
なかには「文句ばかり言ってくる部下」もいれば「まったくやる気のない部下」もいます。
しかし、上司である以上、部下には毛嫌いをせずに少し視点を変えて興味をもってみてください。
「この部下はなぜ文句ばかり言ってくるんだろう?どんな背景があるのかな?」
「この部下のやる気のなさにはどんな原因があるんだろう?」
普段できれば話したくないような部下でも、視点を変えて興味をもつようにしてみれば、部下と心を通わせるきっかけができるかもしれません。
人は「自分の話を聞いてくれる人を好きになる」生きものです。部下から愛されたいなら、まずは「傾聴」に徹してみましょう。
受け入れることと受け止めることは違う
ここまでお伝えしても「部下の話を聞くのはわかっているけど、いちいち部下の話を受け止めてたらキリがない」と思っている人もいるのではないでしょうか。
とくに自分の利益ばかり追求してくる部下の意見は、できれば退けたいのは上司のホンネかもしれません。
ただ、部下の話を「受け入れること」と「受け止めること」には、まったく別の意味があります。
「受け入れる」とは相手の話を自分の考えとして取り入れること、そして「受け止める」とは相手の話を理解して承認することを指します。
おそらく上司の皆さんは「受け入れたくないから話を聞かない」のではないでしょうか。
部下の相談ごとのなかには、勝手な意見もあれば会社として真剣に考えるべきポイントが含まれていることもあります。部下から相談されやすい上司を目指すなら、どんな否定的な意見でも、まずは「受け止める」ことが大切です。
もっと話しやすい上司になるために
最後に「相談しやすい上司」「意見を言いやすい上司」になるための具体的な方法についても、いくつかご紹介しておきます。
上司自身も「話を聞いてもらおう」
いつも部下からの相談を受ける上司は、宗さんする側の気持ちを忘れがちです。
ときには「人に承認されることがどんなに気持ちいいことなのか」、また「人に理解してもらえるとどんなに素直になれるのか」自分自身で感じることも大切です。
会社のなかにはキャリアコンサルタントなど、いわゆる「傾聴のプロ」がいるものです。一度、雑談でもいいですから自分から相談してみるようにしてください。部下の「本当の気持ち」がわかるかもしれません。
相手によって褒め方を変えてみる
部下のモチベーションアップのためには「相手を褒める」といったことはとても重要です。
部下から相談されたときでも「あなたはこんなスキルがある!だからもっとがんばろう!」といった言葉で締めくくると、次回も相談されやすくなるでしょう。
ただ、褒められた部下のなかには「所詮、こっちのモチベーションアップのためのお世辞だろう」と少しひねくれた考えをもってしまう部下もいるかもしれません。
部下を褒めるときには「Iメッセージ」と「YOUメッセージ」の2つの褒め方があります。
Iメッセージは「私は〇〇だと思っている」、そしてYOUメッセージは「あなたは〇〇です」と、それぞれ使う主語がことなります。
もし「お世辞だろう」と少しひねくれた感情を持つ部下がいたなら、YOUメッセージよりもIメッセージのほうがいいでしょう。
さらにいうと、「I」を第三者に置き換えて、「〇〇部の△△さんが、あなたのことを褒めていましたよ」というのが、意外に効果的かもしれません。
まとめ
部下の気持ちをくみ取るためには上司の「傾聴スキル」を鍛える必要がありますし、そもそも部下と信頼関係を築くにはそれなりの時間が必要です。
上司が自分ひとりでできる仕事はたかがしれています。チームとして成功するためには、部下ひとり一人の意見をくみ取ってパフォーマンスを最大化することが重要です。
上司自身が14個の心をもって話を「聴くスキル」を磨き、部下のモチベーションを維持することも上司に求められるスキルのひとつかもしれませんね。