テレワークで懸念されるのは、セキュリティリスクです。
テレワークでは、会社のPCを社員に貸与したり、社員がスマートフォンで会社のネットワークにアクセスしたりするため、どうしてもセキュリティリスクが高まります。
こうしたリスクへの抜本的な対策として注目されているのが「シンクライアント」です。
本稿では、テレワークにおけるセキュリティリスクを低減するシンクライアントの仕組みやメリット・デメリットを解説していきます。
シンクライアントとは?
シンクライアントとは、クライアント端末の機能を最小限にとどめ、処理のほとんどをサーバー側で行うシステムのことです。
サーバーの処理結果の画面をクライアント端末に転送することで、あたかも手元のクライアント端末で操作しているかのように見せています。
シンクライアントの最大のポイントは、クライアント端末にアプリケーションやデータが保存されていないこと。
万が一、社員が端末を紛失したり、端末がウイルスに感染したりしても、情報漏えいの危険性がほとんどないため、まったく新しいセキュリティ対策として注目されています。
シンクライアントとファットクライアント
一般的なPCは、CPUやメモリ、ハードディスクなどのハードウェアを持ち、そこにOSやアプリケーションなどのソフトウェアがインストールされています。
一方、シンクライアントにおけるクライアント端末(シンクライアント端末)は、CPU、メモリ、OS、アプリケーションなどを持たず、ディスプレイとキーボードのみを備えています。
前述のように、シンクライアント端末はサーバーで処理された結果の画面を表示するだけなので、メモリやアプリケーションは必要ありません。
最小限の機能しか持たないことから「シン(Thin:薄い、少ない)クライアント」と呼ばれています。
対して、多くの機能を持つ一般的なPCは「ファット(Fat:厚い・太った)クライアント」と呼ばれています。
テレワーク時代にシンクライアントが必要な理由
働き方改革の推進や新型コロナウイルスの蔓延により、テレワークを導入する企業が増えてきています。
一方で、社員が社外で仕事をする際には、セキュリティ上のギャップが生じやすいため、情報漏えいなどのリスクが懸念されているのも事実です。
シンクライアントは、こうしたテレワーク環境特有のセキュリティリスクに対応する手法として注目されています。
前述の通り、シンクライアント端末にはアプリケーションやデータが保存されません。
シンクライアントを導入し、社員にシンクライアント端末を持たせることで、テレワークにおける情報漏えいのリスクを大幅に低減することができます。
また、政府もテレワークを推進しており、テレワーク環境を整備する企業に対して補助金制度を設けています。
働き方改革推進支援補助金(新型コロナウイルス感染症対策テレワークコース)と働き方改革推進支援補助金(テレワークコース)です。
これらの制度では、シンクライアント端末の購入費用は基本的に補助金で賄われます。
シンクライアントの方式は2種類
画面転送型
画面転送型は、サーバー側ですべての処理を行い、シンクライアント端末では処理を行いません。
シンクライアント端末ではキーボードとマウスの操作のみを行い、サーバー側でアプリケーションを実行し、その結果の画面をシンクライアント端末に表示します。
画面転送型は、さらに
- 「ブレードPC型」
- 「サーバー型」
- 「デスクトップ仮想化(VDI)型」
に分類されます。
ネットブート型
ネットブート型は、サーバーに格納されているイメージファイルをダウンロードして、シンクライアント端末でOSやアプリケーションを実行するもので、シンクライアント端末ではCPUやメモリを使用するため、通常のPCと同じように使用することができます。
シンクライアントのメリット・デメリット
シンクライアントのメリット
▶セキュリティが向上します
シンクライアントでは、シンクライアント端末に表示される情報はすべてイメージ画面です。
基本的にデータはすべてサーバーに保存され、シンクライアント端末には一切保存されません。
そのため、万が一端末を紛失したり、ウイルスに感染したりしても、情報漏えいの可能性はほとんどありません。
▶管理コストの削減
シンクライアントでは、OSやアプリケーションはサーバー側で一元管理されています。
個々のシンクライアント端末にはOSもアプリケーションもインストールされないため、アップデートなどの管理が不要となり、管理コストの削減につながります。
シンクライアントのデメリット
サーバーに負荷がかかる
シンクライアントは、サーバーのリソースを複数のユーザーで共有するため、サーバーへの負荷が高くなります。
サーバーに負荷がかかることで、パフォーマンスが低下する可能性があります。
ネットワーク環境がないと利用できない
シンクライアントはネットワーク回線を介してサーバーと接続するため、シンクライアント端末はオフライン環境では使用できません。
ネットワーク環境に依存するため、テレワークで利用する場合は安定した通信環境を確保する必要があるのはデメリットと言えます。
まとめ|セキュリティを保ちながらどこでも仕事ができる
昨今、セキュリティリスクはますます多様化しており、特にテレワーク環境は大きな脅威となっています。
いつでも社外のクライアント端末から重要なデータが流出しても不思議ではありません。
そのようなリスクを排除したいのであれば、「そもそも端末にデータを保存しない」という抜本的な対策が可能なシンクライアントが有望な選択肢となります。