やりたいことを実現するには、会社を辞めて独立するのも一つの方法ですし、会社の中で新しいビジネスを始めるという方法もあります。
いわゆる社内起業、またの名をイントラプレナーと言います。
自分のやりたいことがわかっているなら、あなたも手を挙げて社内起業にチャレンジすることを考えてみませんか?
今回は社内で起業することの3つのメリットと、軌道に乗せるための7つのステップを、嶋コンサルの実体験をもとにご紹介したいと思います。
社内起業(イントラプレナー)のメリット3つ
社内起業家になることは自分でビジネスを始めるよりも、より安全な方法です。
一般的に社内起業家になることには、3つの大きなメリットがあると考えられます。
1.社内起業家は失敗しても収入が途切れることはありません
会社の中で起業するということは、会社に雇用されているということですから、たとえ失敗しても会社から給料という形で収入を得ることができます。
これは、一人で起業して失敗するのとは大きな違いです。
失敗のリスクが減るので、安心してチャレンジできます。
同様に、社会保険や厚生年金が継続されることも大きいでしょう。
日本は一度失敗すると立ち直るのが難しい社会だと言われています。
自分で起業すれば、これまで会社が負担していた社会保険や年金をすべて自分で負担しなければなりませんが、社内起業であればその点の心配は不要というメリットがあります。
2.社内起業は成功しやすい
社内起業は社内のリソースを活用して起業できます。
人脈や予算に加えて、自分が持っていないノウハウや情報を得ることが、新規事業を成功させるための条件ですが、社内起業の場合にはこれらの条件がある程度整っていることは非常に心強いことです。
また、うまくいかなくても、再チャレンジしやすいというのも大きなメリットです。
失敗したからこそ、他では学べなかったことを学び、その貴重な経験や情報を次のチャンスに活かすことができます。
自分でビジネスを始めて再挑戦しようとする場合は、そう簡単ではありません。
もしかしたら、自己破産をするような多額の借金を抱えてしまうかもしれません。
そのような場合、再チャレンジするためには、経済的にも精神的にも多くの負担を強いられることになります。
3.社内起業は成功時のインパクトが大きい
自分で新規事業を立ち上げて成功させる方が周囲に与えるインパクトが大きいと思います。
成功した後も、社内起業であればすでに社内で認知されている事業なので、ある程度軌道に乗ることが見えていれば、比較的容易に予算を獲得できるはずです。
会社を辞めて独立する場合は、銀行や投資家に提案して資金調達を行わなければいけません。
あなたのバックグラウンドを知っている人がいないため、資金調達も容易ではないでしょう。
長い間業績が上がらずに悩んでいたとしても、社内起業をすることによって、社内の評価を一変させる効果があります。
社内起業のステップ
1.社内でビジネスを始めるためのアイデアや企画を考える
まず必要なのは、自分のやりたいことをどうやってビジネスとして成立させるかというアイデアです。
これがないと何も始まりません。
アイデアを考えれば、それを実現するための方法も自然と考えられるようになります。
- いつ
- どのようにして
- 何を実現するのか
を考えることで、アイデアは徐々に現実のものとなっていくのです。
2.社内で協力してくれる人を集める
一人でアイデアの実現にチャレンジするのもいいですが、仲間がいたほうが準備作業だけでなく、精神的にも楽ですよね。
できれば、
- 開発
- 販売
- 生産
- 販売促進
のバリューチェーンにそれぞれ1人ずつ、計5人くらいがいいと思います。
そのほうが目立ちませんし、課題の洗い出しや意見の調整もしやすいでしょう。
人が多すぎるのも問題です。
人数が多すぎると、いろいろな意見が出すぎて、計画を立てる前に頓挫してしまう可能性があるからです。
3.レポートラインに相談
ある程度、アイデアやプランが固まってきたら、直属の上司をはじめとするレポートラインで議論してもらいます。
当然、それぞれの報告ラインで意見や撤回、否定があると思いますが、提案は自由ですから、(嫌な顔をされても、時間がかかっても!)あきらめずに、指摘された点を改善するために提案を繰り返してください。
4.社長に直談判
私の場合、直属の上司のところで計画が1年ほど保留されてしまっていたため、思い切って社長に直談判してみました。
その結果、計画が動き出し、最終的に新規事業を立ち上げることができました。
ただし、この方法は最終手段です。
直談判した結果、上司との関係がギクシャクしてしまいます。
なるべく社内のレポートラインへ報連相をするようにしましょう。
5.事業計画をつくる
- 市場のニーズ
- 成功のための前提条件
- 戦略
- 必要なコストと時間
などを考慮します。
とはいえ、最終決定者にたどり着くまでのいくつかの障壁をクリアすれば、ビジネスプランに必要な項目はある程度準備できているはずです。
あとは、それらをプレゼン資料に落とし込み、説得力のあるものにするだけです。
6.試作品を作り実績をつくる
ビジネスプランの作成と並行して、試作品(プロトタイプ)を作って実績をつくりましょう。
斬新なアイデアであればあるほど、レポートラインを通過するのに時間がかかるでしょう。
その間に、ただ市場調査をしたり、計画を練り直したりするのでは時間がもったいないです。
ぜひ、試作品を作って、実際にお客様に使っていただいてフィードバックを得たり、アンケートを実施して仮説の正しさを証明したりすると、承認してもらいやすくなります。
7.予算の獲得
あとは、ビジネスプランを発表して、最終決定者の承認を得るだけです。
ただし、このときに気をつけなければならないことがあります。
できればプロジェクト化してもらうことです。
新規事業を成功させるためには、次の3つの条件が必要だとよく言われますのでご紹介します。
社内起業を成功に導く3つの条件
1.専任化
他の業務から外してもらって、社内起業プロジェクトに専任になることです。
これにより、他の業務に関わることによる時間や工数のロスがなくなるだけでなく、新規プロジェクトのパフォーマンスを他の業務のせいにすることができなくなるため、コミットメント効果が期待でき、責任の所在が明確になります。
もちろん、自分のモチベーションを最大化する効果も期待できます。
2.メンバー間のフラット化
フラット化することで、意思決定が格段に早くなります。
社長直属のプロジェクトにしてもらえれば、予算の獲得や意識のすり合わせもしやすくなります。
3.隔離(サンドボックス)
プロジェクトが他の部署やオフィスから隔離されていることの効果は非常に大きいです。
新規プロジェクトがうまくいかないことが多い理由の一つに、関連部署が横やりを入れてくることがあります。
自分のアイデアが、どこか他の部署の業績に関係していたり、これまでのやり方や商習慣に抵触するようなプロジェクトであれば、必ず反対や批判を受けることになります。
そのような場合には、前述のように社長直轄のプロジェクトとするだけでなく、社長が精神的に安心してプロジェクトを進められるように、物理的にもプロジェクトを遠ざけておくのが良いでしょう。
また、隔離すべきなのはオフィスだけではありません。
業績評価の基準を既存事業とは隔離(区別)する必要もあります。
新規事業が、既存事業と同じレベルのパフォーマンスを期待できるはずがありません。
新規事業が適切な基準で評価されるためには、組織そのものを隔離することが重要です。