部下が思うように成長しないと悩んでいる上司は多いのではないでしょうか?
変化への対応が遅い、新しいアイデアや工夫が出てこない、結果が出ないなどです。
- 上司の指示がなくてもすぐに対応でき、
- 積極的に意見を述べ、
- 主体的に行動できる部下
が理想ですが、このように部下が成長しない場合、上司は解決すべき問題を抱えている可能性があります。
今回は私・嶋よしかずが現役責任者の立場からよりよいマネジメントのためのノウハウをケースごとに解説しています。
【ケース1】部下の対応スピードを改善するには?
結論:上司がすべての決定を一人で行わないようにする。
【具体的アクション】よりスムーズで質の高いコミュニケーションを!
上司から指示を受けて最低限のことしかしようとしない部下は、自分の頭で考えずに上司に依存している状態と言えます。
しかし、これは部下だけの問題ではありません。
自分は経験豊富で有能であり、的確な判断ができると思っている上司は、部下の意見に耳を傾けないことが多いもの。
たとえ聞いたとしても、「自分の意見が正しい」という思い込みを変えることはほとんどありません。
そうなると、部下は「どうせ上司が決めるんだから」と自分で考えて行動せず、指示待ち人間になってしまいます。
これは、部下の育成だけでなく、ビジネスの現場においても致命的な問題となります。
現在、ビジネスを取り巻く状況はめまぐるしく変化しています。
有能な上司が過去の経験に基づいて方針を決めても、それが現在の状況に合わないことはよくあります。
一方、現場やお客様に近い立場の部下は、市場のニーズや変化にいち早く気づくことができます。
上司が部下の持つ最新の情報を取り上げて判断材料に加えれば、より環境の変化に適応した意思決定ができるようになります。
そのためには、部下とのコミュニケーションの質を高めることが必要です。
議論の後は、相手の意見を取り入れ、自分の考えをアップデートすることが望ましいです。
また、「自分だけでは正しい判断ができない」「部下に言われて意見を変えるのは上司としての威厳を損なう」という考えを捨て、部下の意見を柔軟に取り入れることが必要です。
どんなに優秀な上司・マネージャーであっても、未来を完璧に予測・判断することは不可能ですから、コミュニケーションの結果、自分の考えが変わることは悪いことではありません。
むしろ、その方が現状に即したものになり、話し合いの効果を生み出すことができます。
たとえ最終的に部下の意見と違ったとしても、自分の意見を聞いてもらえたという事実は、部下のモチベーションに良い影響を与えます。
一方通行のコミュニケーションでは、現場から情報を集めて、現状に応じたアクションを起こすことができません。
双方向のコミュニケーションでは、お互いに言いたいことを言い合うだけです。
部下が新しい情報を持ってきても、上司の現状認識は古いままです。
スムーズで質の高いコミュニケーションとは、お互いの考えをアップデートすることで、変化に対応しやすくなるという特徴があります。
【ケース2】部下から新しいアイデアやイノベーションを引き出す方法
結論:部下間の情報共有を促し、活発な意見交換ができる環境を整える。
【具体的アクション】生産的な意見を得るためには、フラットな組織を作ることから始まります。
部下同士が日常的に活発な意見交換をしていないと、生産性の高いアイデアが減ってしまいます。
これは、イノベーション以前の問題です。
情報を蓄積して可視化しただけでは、何の価値も生み出せません。
必要なのは、部下が得た情報をチーム全体で共有することです。
共有された情報をもとに、部下たちが考え、意見を交わし、新たなアイデアに昇華させる。
これにより、イノベーションの創出が期待できます。
ここでも、より円滑で質の高いコミュニケーションが不可欠です。
インスピレーションは何気ないコミュニケーションの積み重ねから生まれるので、フラットな組織づくりが有効です。
ヒエラルキー意識が強いと、平等な意見交換ができず、他者のアイデアを取り入れる柔軟性が損なわれます。
フラットな組織にするためには、上司が率先して話しやすい雰囲気をつくることが望ましいです。
部下に指示を出しすぎないように意識し、経験の浅い部下の意見にも耳を傾ける姿勢を見せましょう。
そうすることで、部下が上司に意見を言いやすくなり、それがチーム全体に波及して、誰もが対等に話せる雰囲気になり、会議も活性化するのです。
【ケース3】部下の成長をさらに促すには?
結論:部下の可能性を信じて長い目で見てサポートする。
【具体的アクション】部下を一人の人間として尊重し、長所を見つけましょう。
仕事でなかなか結果が出せない部下がいたとしても、その時点で最終的な評価をするのは避けたほうがいいでしょう。
成長には個人差があり、成長のスピードや得意分野、適性も異なるのは当然です。
欠点を見つけてそれを修正するような教育方法は、均質な能力を持った人材を育成するには適していますが、個性や自発的な行動を抑制することになります。
一人ひとりの異なる可能性に着目し、長期的な視点で育成していくことが望ましいのではないでしょうか。
前述のケース1、2の取り組みを実践し、コミュニケーションを充実させ、部下間で情報を共有し、活発な議論ができる環境を整えれば、部下は自分の意見を持つようになります。
その上で、部下の適性を見極め、自分の強みを正当に評価しその可能性を最大限に引き出せるように努力してください。
言葉を聞くだけでなく、言葉以外の態度や行動で気持ちを汲み取るようにすると、部下は自分の存在価値に気付き、長い目で見て成長につながります。
その過程で上司への信頼が高まり、上司の下で働きたいと思うようになるのです。
部下を組織のために協力し合う一人の人間として扱い、その場で結果を出せるかどうかだけで評価するのではなく、部下一人一人とチーム全体の成長を考えていることを態度で示すことが大切なのです。
まとめ|今の時代に必要なのは、部下を下から支える上司
これまで紹介してきた1~3のケースには、ある共通点があります。
それは、上司が権威的なリーダーシップを発揮するのではなく、「部下を個人として尊重し、下から支える」という姿勢をとっていることです。
このようなリーダーシップスタイルは「サーバントリーダーシップ」と呼ばれ、部下のモチベーションを高め、自主的な行動を促すことができます。
「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というリーダーシップ哲学
サーバントリーダーシップとは?
出典:株式会社日本パープル
一方、上司が権力を持って部下を支配し、一方的に指示したり動かしたりすると、部下は上司を恐れ、指示に従うことを第一に考えるようになります。その結果、自分で考えて行動することができなくなってしまいます。
部下に任せるより、一人でやったほうが早くて効率がいいと思っていると、仕事量はどんどん増えていきます。
また、上司の能力の限界がチームの限界になってしまいます。
ビジネスの変化に迅速に対応し、最大限の成果を上げるためには、チームのメンバー一人ひとりが主体的に考え、工夫していくことが必要です。
そのためにも、上司は部下への配慮やサポートを怠らず、部下一人一人がチームの一員として活躍できるようなマネジメント手法を学び、実践してほしいと思います。