売上拡大のためのアイデアを検討するために、会議が開かれました。
年齢に関係なく行われる会議なので、若手社員を気遣った営業部長が「みんなで積極的に意見を出し合って、次の手を考えよう。若い人たちも遠慮せずに率直に意見を言ってほしい」と切り出しました。
ここまではよかったのですが、若手社員が勇気を出して改善案を提案したところ、
「それでは○○点に対応できない」
「それはちょっと難しいのではないか」
と否定的な意見で押し返されてしまいました。
そこから若手、中堅社員に遠慮がちな雰囲気が広がってしまいました。
結局、管理職だけが発言することになってしまったのです。
このような感じで、あなたの職場では部下が自分の意見や本音を言わない、言わなくなったということはありませんか?
嶋よしかずコンサルオフィスでは、このような悩みを持つ管理職の方の声をよく聞きます。
チームパフォーマンスを決める5つの要素
- チームメンバー全員が同じ量の話をしており、一回の発言が短い
- チームメンバー同士のアイコンタクトが多く、話し方や伝え方にエネルギーがある
- リーダーだけに話すのではなく、チームメンバー間で直接コミュニケーションをとっている
- メンバー間で個人的な雑談がある
- 定期的にチームを離れて外の環境を体験し、戻ってきたときに新しい情報を他のメンバーと共有している
このような5つの要素は、チームパフォーマンスを決めるものとして研究で明らかになっています。
このように優れたチームの特徴には、一般に考えられているものとは異なるものがあることに驚かれるかもしれません。
冒頭の会議には、これらの要素が欠けていたと言えます。
では、部下が本音を言えるような風通しの良いチームを作るための秘訣は何なのでしょうか?
部下に本音を言わせるために必要なこと
「心理的安全性」を確保しよう
結論から言えば、心理的に脅かされていない、心理的に安全な状態が部下の本音を引き出し、チームのパフォーマンスを高めます。
心理的に脅かされていない、心理的に安全な状態を心理学的には「心理的安全性」(psychological safety)といいます。
具体的には、「自分の意見が気まずく表明されたり、拒否されたり、罰せられたりしないという安心感」のことです。
互いを信頼し合い、尊重し合い、ありのままの自分でいられる雰囲気がある状態でこの「心理的安全性」は醸成されます。
心理的安全性のメカニズムは、脳科学的に説明することができます。
ハーバード大学で心理的安全性を研究しているエイミー・エドモンドソンは次のように発言しています。
Team psychological safety is defined as a shared belief that the team is safe for interpersonal risk taking.
Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams
日本語で言うと、
「チームの心理的安全性とは、”チームは対人的なリスクを取るのに安全である”という共通の信念が醸成されていること」
となります。
つまり、リスクを取っても寛容な雰囲気がチームにあれば、心理的安全性が得られるということです。
冒頭の例では、営業部長のコメントで若手や中堅社員は元気が出たはずです。
しかし、若手社員の発言を否定的なコメントで遮ってしまったため、意見が出てこなくなってしまいました。
これはまさに「心理的安全性」が阻害された状態と言えます。
もし、管理職など上位の者全員が、若手や中堅社員の意見に耳を傾け、感謝の言葉を述べていれば、彼らは心理的に安心して、より多くの意見を引き出すことができたはずです。
まとめ
部下に本音を言わせるために必要なことは、以下のとおりです。
- 反対意見や否定意見を言わない
- 発言者に感謝を述べる
- どのような意見でも受け入れる雰囲気作り
- 発言者に対して話を遮らない
いきなり上記のことを実施しても難しいでしょうから、普段から管理職が部下面談や朝礼、雑談に至るまで意識を配る必要があります。
「心理的安全性」が醸成されることで、職場の風通りは良くなり以下の副次的効果も生まれます。
- 退職者の低減
- 生産性の向上
- パワハラや社内いじめなどの低減
- 愛社精神の醸成
- 従業員のウェルビーイングの改善