組織における上司・部下の対話手法として注目されている「1on1ミーティング」。
今回は、1on1ミーティングの背景や目的をご紹介します。
1on1ミーティングとは?
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う対話のことです。
ある企業ではこのコミュニケーション形態のことを「2way」(ツーウェイ)と言ったりもします。
1対1の対話というと、評価面談をイメージされる方も多いと思いますが、1on1ミーティングと評価面談とはその目的や実施方法には大きな違いがあります。
多くの場合、1on1ミーティングは週に1回、少なくとも月に1回は実施されます。
また、1回の時間を30分程度に設定している企業が多いようです。
もちろん、会社やチーム、職種によっても異なりますが、通常の面接と1on1ミーティングの大きな違いは短いサイクルで定期的に実施されることです。
革新的なベンチャー企業や有名企業が集まるアメリカのシリコンバレーでは、1on1ミーティングは当たり前のように行われてきましたが、ここ数年においてはヤフーをはじめとする有名企業が取り組んでおり、日本企業からも注目されています。
【嶋部長ポイント】
▶1on1ミーティングは評価面談ではない
▶実施頻度は週1~月1
▶1回の実施時間は30分程度
▶近年では日本企業から注目されているコミュニケーション形態
1on1ミーティングの実施目的とは?|部下をマネジメントする
これまで、上司と部下の1対1のコミュニケーションといえば、MBO(Management by Objectives)制度による年2回の人事評価面談が主流でした。
「目標管理制度(MBO)」とは、個別またはグルーブごとに目標を設定し、それに対する達成度合いで評価を決める制度で、Management by Objectivesと書きます。1954年にP.F.ドラッガーが自身の著書の中で提唱した組織マネジメントの概念です。
HRpro「目標管理制度(MBO)」
それ以外の上司と部下の1対1のコミュニケーションの機会については、上司から否定的な意見を言われるなど、あまり良い印象を持っていない人も多いのではないでしょうか。
それは、これまでの上司と部下の関係が「上司が指示を出し、指摘する」というものだったからです。
一方で1on1ミーティングの目的は、部下の成長を促すことにあります。
上司が報告を求めたり、指摘をしたりする「管理の時間」ではありません。
部下の現状や悩みに寄り添いながら、その能力を引き出していく部下育成のための時間なのです。
そのため、1on1ミーティング終了後に部下が「あなたに相談してよかった」と思ってくれることが第一の目標です。
【嶋部長ポイント】
▶1on1ミーティングは部下育成のために行われる
▶相談してよかった、と思ってくれることが第一の実施目標
1on1ミーティングが注目されている背景|VUCA時代の到来
「VUCA時代」とは、
- Volatility(変動性・不安定さ)
- Uncertainty(不確実性・不確定さ)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性・不明確さ)
の頭文字をとった言葉です。
詳しくはこちらの記事で解説していますのでご覧下さい。
VUCA時代とは、新型コロナウイルスによる世界経済の停滞などをはじめとする「先行き不透明、混沌とした現代社会」を言い表している言葉です。
市場の変化が急激で不確実な昨今、従来の経験や物差しでは通用しないことが多くなってきました。
あらゆる事象に正解はなく、いくら上司であっても解答を持てない場合が多いのです。
デジタルネイティブ世代と言われるように、子供の頃からインターネットに慣れ親しんできた若い人たちが社会に出てきています。
今まで人に教えてもらっていた知識が「検索して調べられる」ようになったため、上司が部下に教えることが少なくなってきています。
むしろ、デジタルネイティブ世代の方が情報収集能力が高いと言われています。
だからこそ、上司から部下への一方通行のコミュニケーションではなく、上司が部下に教えてもらうという双方向のコミュニケーションが組織には必要なのです。
労働環境や世論の変化
日本では人口減少に伴い、労働人口の減少が顕著になってきています。
また、終身雇用や年功序列が崩壊したことで、転職に対する精神的なハードルも低くなっています。
テレワークが推進され、出社しなくとも仕事ができるという状態が認知されました。
副業・兼業・ダブルワークといった勤務形態が広がり、私達を取り巻く労働環境は大きく変化しています。
つまり、企業は少人数で流動的な労働力をどれだけ維持できるかが重要になってきているのです。
特にミレニアル世代は本来の自分を否定されたり、過酷な環境に耐えたりすることを「良し」と考える人は少数派です。
自分の強みを伸ばすこと、自分の好きな環境で働くことへの価値観の変化も、1on1ミーティングが普及している理由のひとつです。
ミレニアル世代とは、平成初期(1989年~1995年)に生まれた世代のこと。団塊ジュニア世代の子供と重なる。インターネット環境が整ったころに育った最初の世代で、パソコンよりスマホやタブレットを駆使する。LINEで友人と繋がり、TwitterやFacebookも好む。情報の収集はSNSがトップ。
JTB総合研究所「ミレニアル世代」
まとめ
1on1ミーティングのアジェンダ例
- 実現したいキャリア
- 最近注力している仕事
- 自分の強みと弱み
- 現在の仕事のやりがい、自分にとって大切なこと
- 今後のキャリアの抱負と方向性、それに対する課題
ビジネスのスピードが速くなり、上司と部下の関係が変化している中で、1on1ミーティングは部下が本来持っている能力を伸ばすための方法の一つです。
1on1ミーティングは短期的には効果が見えにくいかもしれませんが、中長期的に見れば、上司にも部下にもメリットがあります。
すぐに完璧を目指さなくてもいいので、「1on1ミーティングをまずはやってみる」という気持ちで、徐々に質の高いコミュニケーションを実現していきましょう。