部下の育成は、上司にとって最も重要な仕事の一つです。
しかし、中には自己主張が強く、常に部下と対立している部下や文句ばかり言ってミスが多いので扱いにくい部下もいるかもしれません。
気になる部下の言動は、「理解してほしい」「もっと認めてほしい」といった承認欲求の裏返しです。
あなたを悩ませる部下の言動は、承認欲求が屈折した結果かもしれません。
承認欲求とは、「自分を認めてもらいたい」という人間なら誰でも持っている欲求です。
誰もが持っている欲求ですが、その強さは衣食住の欲求と同様に人によって異なります。
承認欲求は、モチベーションの向上につながるため必ずしも悪いことではありません。
しかし、承認欲求が強すぎて、それにとらわれてしまうと、部下だけでなく周りの人にも悪影響を与えてしまいます。
承認欲求は、ちょっとしたきっかけで強くなったり弱くなったりします。
特に若いうちは、承認欲求が高まって自分でもコントロールできなくなる可能性があります。
上司は部下の承認欲求にどう対処するかが重要です。
今回は、承認欲求の強い部下に悩まされている上司の方に向けて解説したいと思います。
- そもそも、承認欲求とは何か?
- 承認欲求が強い部下の特徴とは?
- 承認欲求が強い部下との付き合い方
この記事では、以上の内容を解説します。
この記事を読めば、承認欲求の強い部下への対処法を完全に理解することができます。
対応次第では、これまで職場で問題視されていた承認欲求の強い部下が、能力を発揮して会社のユニークな戦力になってくれるかもしれません。
この記事を最後まで読んで理解を深めてください。
承認欲求とは?
承認欲求は、誰もが持っている本能的な欲求です。
- 自分を価値ある人間だと認めてもらいたい。
- 自分の考えを理解してもらいたい。
- 自分を評価してもらいたい。
- 大事にしてもらいたい。
といった感情を言います。
承認欲求は心理学者マズローの欲求5段階説の4段階のうちの1つ
アメリカの心理学者であるマズローは、人間の欲求は大きく5つに分類され、ピラミッドのように整理されると考えました。
承認欲求を深く追求すると、2つのカテゴリーに分けられます。
1.自己承認欲求
自己承認欲求とは、自分を承認してほしいという欲求です。
具体的には、以下のようなことを望んでいます。
- 自分の能力をもっと向上させたい
- 自分の技術力をもっと高めたい
- もっと自分を信頼したい
現在の自分のレベルよりも高いレベルを目指したいという気持ちです。
満足せずに頑張ることは素晴らしいことですが、時にそれがマイナスに働くこともあります。
- 頑張りすぎて疲れてしまう
- 目標が高すぎて、達成できずに悔しい思いをする
これは、比較的真面目で頑張り屋の人が持ちがちな承認欲求と言えます。
努力の経過よりも結果を重視する傾向がありますので、上司は努力の過程を認めてあげることが大切です。
2.他者承認欲求
他人承認欲求とは、他人に認められたいという欲求です。
具体的には、次のようなことを望んでいます。
- 尊敬されたい
- 褒められたい
- 注目されたい
- 地位や名声が欲しい
これらは、他者承認欲求です。
承認するのは他人なので、他人の基準で物事を判断してしまいがちです。
他人の評価を気にするあまり、仕事をおろそかにしてしまう人がいます。
また、良い人だと思われたいがために不要な仕事や残業を引き受ける自己犠牲的な人も少なくありません。
他人に認められたいという欲求が強すぎると、周囲とのコミュニケーションがうまくいかなくなったり、強いストレスを感じたりするなどの悪影響が出てきます。
承認欲求の強い部下の対処法
部下の困った行動の原因がわからなければ、上司は適切な対応ができません。
失恋が原因なのか、友人とのプライベートな問題なのか、それとも強い承認欲求が原因なのか、その対処法はさまざまです。
本章では、承認欲求が強い部下の具体的な特徴を紹介します。
承認欲求が強い部下に共通する特徴は、以下の5つです。
- 自分をアピールするのが得意
- 他人からの評価を非常に気にする
- 言い訳が多い
- すべてを自分の都合のいいように解釈する
- 他人を上から目線で扱う
では、承認欲求の強い部下にはどのように対処すればよいのでしょうか。
実のところ、上司には有効な対処法がいくつもあります。
以下に、上司ができる方法を挙げてみました。
- 視線を合わせ、名前を呼ぶ
- 注意深く聞く
- 具体的な理由をつけて褒める
- 感謝の気持ちを伝える
- 時には厳しい叱り方をする
どれも今すぐ誰にでもできる簡単なことなので、ぜひ明日から始めてみてください。
1.視線を合わせ、名前を呼ぶ
シンプルかつ強力な承認のサインは、目を合わせて相手の名前を呼ぶという行為です。
そんなの当たり前じゃないか!と思われるかもしれません。しかし、意識していないと、ついパソコンの画面や資料を見ながら話してしまいがちです。
- 相手の目を見て挨拶する
- 自分の名前を呼ぶ
- 会話中に目を合わせる
これらは、日常的に送ることができる承認の3つのサインです。
この3つのサインを守れば、相手は「自分を受け入れてくれている」「認めてくれている」と感じますので、ぜひ実践してみてください。
2.注意深く聞く
また、部下の話を聞くときの姿勢も重要です。
聞くということは、ただ聞くだけではなく、心を開いて聞くということです。
聞くことは、相手に満足感を与えることができるので、上司にとって必須のスキルです。
3.具体的な理由をつけて褒める
人間は、褒められることで承認欲求を満たします。
しかし、ただやみくもに褒めればいいというわけではありません。
- 誰にでもできる簡単な仕事を褒めてしまう
- 無理やり取ってつけたような褒め方
このようなことをすると、相手は「バカにされているのかな?」と違和感を覚えます。
上手なほめ方のポイントは、具体的な理由を添えることです。
例えば、「現場のことをよく知っているあなたが担当してくれたことで、クライアントもスムーズに仕事ができたと喜んでくれた」など、部下個人を褒める(喜ばせる)理由を述べてみましょう。
4.感謝の気持ちを伝える
誰でも感謝やお礼の言葉を言われると嬉しいものです。
上司からの感謝の言葉は絶大な効果を発揮します。
いつも気配りの効いた資料を作ってくれてありがとう。
あなたの頑張りにいつも助けられているよ。
と言われて不快に思う部下はいません。
それどころか、
上司が私の仕事を認めてくれた!
私が頑張っている姿を見てくれていたんだ!
といったように、予想以上の効果が期待できます。
部下にとって、上司に感謝されることは成功体験になります。
成功体験の積み重ねが自己肯定感を支え、自分の努力を認められるようになるのです。
5.時には厳しい叱り方をする
承認欲求は、褒められることで満たされますが、逆に叱られることで、自分の存在が周囲に影響を与えていることを実感することもできます。
ただし、相手を叱るときは頭ごなしに否定してはいけません。
決して「あなたはだらしない人だ」「あなたはいつも嘘をついている」などと、部下の人格を否定してはいけません。
叱るときのポイントは、
- 事実を指摘する
- しつこく責めないこと
- 部下の人格を否定しないこと
- 部下の個性を否定しないこと
です。
上司が部下の承認欲求を満たす必要がある2つの理由
承認欲求の強い部下を持つことは、上司にとって難しいことです。
怒りを感じたり、情けなくなったり、感情を揺さぶられることもあるでしょう。
しかし、承認欲求の強い部下は決して悪い社員ではありません。
承認欲求が強いということは、自分の能力を高めたいという気持ちの表れです。
また、強すぎる承認欲求にとらわれて困った行動をとる部下は、自制心の欠如に陥っているとも考えられます。
そして、彼らは決して例外的なケースではありません。
誰でも、環境やちょっとしたきっかけで、承認欲求に押しつぶされ自分をコントロールできなくなることがあります。
職場では、承認欲求の強い部下を助けられるのは上司だけです。
上司は、部下の長所や努力、貢献度を認め、適切に対処することで、部下が本来の能力を発揮できるようにすることができます。
上司の接し方次第で、その部下は組織にとってかけがえのない存在になるのです。
1.承認欲求が強い=悪いというわけではありません
承認欲求の強い部下は、「扱いにくい」「面倒くさい」というイメージがあります。
しかし、承認欲求が強いことは決して悪いことではありません。
問題なのは、承認欲求が強すぎて、承認欲求が満たされないことです。
承認欲求とは、「自分を認めてもらいたい」という欲求です。
認められたいという気持ちは、何事にも前向きに取り組む姿勢や努力につながります。
承認欲求が強い部下は、“成長の余地がある”と言えます。
2.承認欲求を満たすことができればやる気を引き出せる
自分の頑張りや貢献が認められると、誰でも嬉しいものです。
どんなに大変な仕事でも、自分の努力が実を結び認められると、次はもっと頑張ろうという気持ちになるものです。
承認欲求の強い部下は、次のように言います。
「もっと責任ある仕事をさせてください」
「スキルが上がったら昇給させてください」
承認欲求の強い部下は、自分の欲求を満たすために努力や工夫をしますが、その努力が認められるととても喜びます。
部下にとって上司に褒められることは最も嬉しいことの一つであり、上司の目に留まるようなことをした自分を誇りに思うでしょう。
まとめ|部下を活かすのは上司の手腕!
どんな職場にも承認欲求の強い部下がいます。
承認欲求はモチベーションの表れとも言え、それ自体は悪いことではありません。
しかし、承認欲求が強すぎると、部下のモチベーションが暴走してしまい自滅してしまうことが多いのです。
承認欲求が強い部下には、以下の6つの特徴があります。
- 自己顕示欲が強い
- 他人からの評価を極端に気にする
- 頻繁に言い訳をする
- 何でも自分の都合の良いように解釈する
- 他人をよく褒める
- 他人を上から目線で扱う
上記に該当する部下には、適切な対応が必要です。
- 視線を合わせ、名前を呼ぶ
- 注意深く話を聞く
- 具体的な理由をつけてほめる
- 感謝の気持ちを伝える
- 時には厳しい言葉で叱る
承認欲求は、誰もが持っている本能的な欲求です。
その強弱にかかわらず、すべての社員が持っている本能的な欲求であり、それを健全に満たすことで、活気ある組織を作ることができるのです。